筆者の立場や目線を統一しない文章は、読者を混乱させる+「プロデューサーであらせられる」「憂慮なさっておられる」という言葉遣いについて
コンテンツ・ディレクターの立見です。今回はひさびさに文章術についてお伝えします。
「筆者のスタンスが定まっていない文章」や、「丁寧語が無駄に使われている文章」は読者を惑わせ反感を買うこともある、というお話です。
「媒体主旨」と「筆者の立場」を明確にしよう
筆者の目線が統一されていない文章は読者を混乱させます。
わかりやすいように、たとえを挙げてみましょう。
まずは文章を掲載する「媒体(メディア)」と「媒体の目的」「筆者の立場」「記事内容」を以下のように規定します。
- 記事を掲載する媒体は夜行バス・観光バス会社が運営する「バス情報&予約サイト」
- 旅のお役立ち情報を発信するコラムコーナーで「夜行バスは便利な乗りものである」ことを多くの人に知ってもらい、夜行バスを身近な存在として認めてもらう
- 筆者は上記運営会社のコラム編集部に所属する人物
- 記事では「夜行バス移動中に使える便利な安眠グッズ」を紹介
このような前提に立って安眠グッズを紹介するときに、以下のような一文を入れたとしましょう。
「こちらの商品は夜行バスにご乗車する場面でぜひ使っていただきたい一品です」
この一文を読んで、奇妙に思った人も多いのではないでしょうか。
文章の前半と後半でスタンスが変わってしまっている
まず前半の「こちらの商品は夜行バスにご乗車する場面で」までは、「バス会社が乗客に向けて書いている」内容として間違った感じはしません。しかし後半の「ぜひ使っていただきたい一品です」には強烈な違和感をおぼえます。
記事の主旨とバス会社の思惑は「(安眠グッズを使うことによって)バスの移動時間をさらに快適にすごしてほしい」であって、グッズを買ってほしいわけではありません。
バス会社は安眠グッズの販売会社とはまったく関係がなく、紹介するグッズが売れても売れなくても利害は発生しません。
しかし「ぜひ使っていただきたい一品です」としてしまうと、安眠グッズの販売会社が“グッズ購入を考えているお客様”に対して「ご購入いただきたい」と商品を宣伝しているようにも錯覚しかねません。ここで読者は「この文章は誰に向けて、何の用件で書かれたものなのか」がわからなくなり混乱してしまうのです。
改めて前提を振り返ってみましょう。
- 筆者はバス運営会社のコラム編集部員
- 読者はバス利用者(もしくはこれからバスを利用しようと考えている潜在顧客)
- 快適なバスの移動時間をすごすために安眠グッズを紹介している
これらを踏まえて下記のように改めてみます。
×「こちらの商品は夜行バスにご乗車する場面でぜひ使っていただきたい一品です」
○「夜行バスで移動時間を快適にすごすために、これらの安眠グッズを使ってみてはいかがでしょう」
下の表現であれば、筆者の立場や目線などのスタンスはブレていないように思います。
なぜスタンスがブレるのか?
この手の問題がおこるのは「誰に向けて何を書いているのか、ライター自身がよくわかっていない」のが主な原因です。また「丁寧語(敬語・謙譲語)さえ使えば誰からも嫌われない無難な表現になる」という思考停止的な誤解もあるかもしれません。
このような誤解に基づいた文章は巷にあふれています。ライターが書いた記事だけでなく、企業の広報が発信したPR文やお詫び文などでもこういった表現を見かけることが増えました。
間違った丁寧語は反感を買うこともある
ごく最近開かれたとある企業の不祥事をめぐる記者会見において、該当企業の取締役が身内の人間に対して「プロデューサーであらせられる」という最上級敬語を使っていました。最上級敬語というのは、通常天皇陛下や時代劇における将軍クラスの人にしか使われないような敬語で(先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!など)多くの人から顰蹙を買っていました。
さらにこの取締役はプロデューサーについて「この件を大変憂慮なさっておられます」と、これまた二重敬語(なさって+おられる)で言及しました。記者会見の場で身内の者に対して「なさっておられる」などと使うのは論外ですが、彼がより正式にプロデューサーへの敬意を表したいのなら(表す場面としては不適切ですが)「おられる」よりは「いらっしゃる」とした方が無難でしょう。
それはさておき、丁寧語や敬語・謙譲語を使う方向が間違っていると奇妙な表現になり、その文章が誰に向けて書かれているのかわからなくなる恐れがあります。また、最上級敬語や二重敬語などを誤用すると、読者は不愉快に思うかもしれません。
まずは媒体の目的と筆者の立場をわきまえ、それに沿った文章を執筆するよう心がけましょう。
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立見
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