AIライターvs人間のライター AIに仕事を奪われないライターとしてこの先生きのこるには

「この先生きのこる」(未来をサバイブする)という字面を見ると「先生がキノコに変身してしまった!」的な場面を連想してしまう立見です。本当は「この先、生き残る」とするか「この先を生き残る」とした方が無難ですが、「この先生きのこる」(初出は2002年8月、2ちゃんねるの土木・建築スレッドとのこと)がどうしても書きたくて、そのまま生かしてみました。

このたぐいの(今回の本題とはまったく関係がない)文化や背景が異なる海外に向けた翻訳が不可能で、死語化も早いネットスラングを好んでタイトルに使うのは一部のライターだけでしょう。一時期の限られた界隈にしか通用しない表現はバグとして処理し、AIにはわざわざ覚えさせない気がします。そして本題と関係ないことにここまで文字数を使うのはどうなんだ、しかも導入部で…と収集がつかなくなってきたので「先生きのこるなんて書くんじゃなかった…」と早くも反省しています。

閑話休題、今回は「AI時代にライターとして生き残る方法」というテーマでお話をしていきます。

試合レポートぐらいならAIライターで対応可能

高校野球の一打席速報の内容から、試合結果レポートを試合終了1秒後に自動生成する「経過戦評ロボットくん」というTwitterアカウントが昨夏話題になりました。

高校野球の戦評、AIが「1秒あまり」で自動作成、Twitter配信 神戸新聞「経過戦評ロボットくん」運用スタート

この自動生成処理には、機械学習を使った人工知能(AI)プログラムが使われており、開発には神戸新聞社の一社員が携わったのだそうです。

実際のツイート内容を見ると、打席速報を分析し、あらかじめ登録したであろう数々の文言から取捨選択して自動的に吐き出しているので、表現自体はテンプレートどおりといった印象です。しかし、学習内容をどんどん蓄積していけば、ゆくゆくは人の手を借りずとも、読み手を満足させられる試合レポートが仕上げられるようになるのではないかという気がします。

このAIの場合、ベースとなる「一打席速報」の入力が必要となるわけですが、現地で速報を入力する人が一人いれば、あとはAIがなんとかしてくれるというわけです。試合データの入力にはライターや記者がかかわることもあるでしょうが、多くの人間の手や頭脳を借りる必要がないので、大幅な労力と人員の削減につながるはずです。

パターン化された業務の文書化ならAIライターで十分

現時点において、さまざまな企業がAIライターの開発と採用に着手しています。
今年1月時点の記事によると(ここまでできる!AI(人工知能)によるライター代行ツール4選)、アメリカの会社Articoolo.linkが提供する、その名も「Articoolo」(英語版のみ)を筆頭に、上場企業の分析をして決算サマリーを生成した日本経済新聞、野球の試合レポート部分をAIが担うアメリカAP通信社、1秒間に2万行のキャッチコピーを生成する中国のアリババなどが続々とAIライターの開発・採用をしています。

決算サマリーや試合レポートなどは比較的システマティックに文書化できる業務なので、「AIの得意分野」という感じがします。

「音声自動入力」や「自動文字起こし」は実用化まで秒読み段階

最近では、インタビュー等のテープ起こしも自動化が進んでいます。

Googleドキュメントには音声データを自動で文字起こしする「Google音声入力」という機能があり、すでに使っているライターさんや学生さんも多いことでしょう。音声認識精度にはまだ不満を感じることが多いので、実用化には遠いものの、Googleの技術革新のスピードを見れば、じきに実用レベルに達するのではないかと思っています。

ライターに脅威をもたらしたAIテキストジェネレーター「GPT2」

英語圏では、OpenAIが開発したGPT2というテキストジェネレーターが話題になりました。

OpenAIが「GPT2」と呼ばれる新しいテキスト生成用のAIモデルを開発しました。しかし、このGPT2はあまりにも優れているため、悪用された場合に非常に高いリスクが生じるということで、技術的な詳細を論文で公表することが延期されることとなりました。

OpenAIが「危険すぎる」として文章作成AIの論文公開を延期したのは間違いだったと研究者が指摘

なんだか末恐ろしい気持ちになってきますね。

グルメサイトRetty、AIライター開発でユーザーが300倍に急増

(この段落のみ2020年6月に追記)

食べログ、ぐるなび、ホットペッパーなど、強大なポータルがひしめくグルメサイト界隈でメキメキと頭角を現した「Retty」。そのきっかけ(の一因)はどうやらAIライターのようです。

口コミからバズ記事生むAIライター。取材も人件費も不要で約300倍成長 | Business Insider Japan

上記記事によれば、サイト内に蓄積された人の手による膨大な口コミをAIが学習し、「人に受けるグルメ系の文言・テーマ」を多用したまとめ記事を、1年間で2万ページも生成。その結果、有望なグルメ系キーワード+地域ワードの検索上位をRettyのまとめ記事が占めるようになり、2年弱で月間アクティブユーザー数が2万から570万に成長したそうです。

Rettyが開発した「まとめ記事自動生成ソリューション」は、グルメサイトだけにとどまらず、アパレル、旅行、化粧品、人材系などの業界企業でも活用され、それぞれのサイトに貯まった口コミ情報から記事を生成し、各社とも業績を伸ばしているのだそうです。

「まず編集部やライタープロフィールを用意しておき、リードは自己紹介と時候の挨拶、それらに絡めて今回のトピックを紹介。本文部分は対象エリアから口コミ上位店をピックアップし、口コミデータから学習した内容をそれっぽくコメント、まとめでは、『行ってみたくなったでしょ?』とお出かけ気分を煽って締める」

といったテンプレートを用意しておき、口コミの情報確度がある程度しっかりしているサイトなら、この手の記事を量産できそうです。

ただし自動生成記事については、以前当社サイトのブログ「ブラックハットSEOとは?具体的手法とWeb制作会社が受託時に実施するブラックハットSEO調査方法」でも言及したように、懸念がないわけではありません。そしてこの件について書かれた先のビジネス インサイダー ジャパンの記事をよくよく読むと、

  • AIの学習ソースは、人が書いた口コミ
  • 口コミという資産を持っていないサイトだと(他所様のパクリは当然NGなので)AIライターは活用できない
  • そのままリリースせず編集者(もちろん人間)が最終チェックをする

となっていて、この部分がポイントである気がします。

実はAIにも不得意な分野はある

「もう人間のライターは用なし!」という空気をここまで煽ってきましたが、実はそんなことはありません。AIは膨大な知識の蓄積や暗記、それらの知識に基づいた計算、分析などは得意ですが、文章の読解などはまだ難しいのだそうです。

AIの東大合格を目標に掲げたプロジェクト「東ロボくん」の主任研究者、新井紀子氏がまとめた著作『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』によると、件のAI東ロボくんは、数学や歴史の穴埋め問題、英文の翻訳などは難なくクリアしたものの、読解力が求められる国語の問題に正解することは難しく、入試に国語科目がある限り、東大レベルに達することはないと判断したそうです。

東ロボくんは、なぜ失敗したのか 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」批評1

「読解力」は人間にはかなわない。しかしその能力は低下してきている…

先ほど紹介した「GPT2」も、品質の高い文章生成ができるとうたっていますが、まだ英語版しか開発されていません。英語と比べると日本語は自動化にはあまりむかない言語なのかもしれません。

私たち日本語を母国語とする人間のライターには、マニュアル化やテンプレート化が難しい、AIには対応不可能な「技能」が備わっています。ただし、前述したような「試合速報」や「インタビュー文字起こし」「まとめ・キュレーション」といった、今までライターが担っていた単純作業は市場に出回らなくなるはずです。なので、それで糊口をしのいできたライターさんは生き残れなくなります。

また、先に紹介した書籍『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』のタイトルで示されているように、現代の子どもの文章読解力や理解力の低下は問題視されています。彼ら子どもの読解力が足りないのは、大人がほどこす教育に不備があることのあらわれで、大人の私たち自身の読解力も実は低下してきているのかもしれません。

「文章をしっかり読んで作者の真意や意図を理解する」という読解力は、執筆にあたって必要な資料を読み込む「インプット」の段階で絶対に必要な技能であり、インプットしたことをしっかりとまとめ、他の人にわかりやすく文章で説明をする「アウトプット」の段階でも発揮される技能です。

「AI時代を生き残っていくライター像」がなんとなく見えてきたのではないでしょうか?
人間にしかできない技能をブラッシュアップさせ、この先生きのこっていきましょう。

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立見香

Webアナリスト・Webコンサルタント
もとは脚本家志望で「書く仕事ならなんでもいい」という一心から求人サイトのインタビュアーとしてライターのキャリアをスタート。途中で事務バイト、販促POP制作、Webデザイナー、htmlコーダー、SEOディレクターなどを挟みながら、Web編集・ライター・コピーライターとしてSSCに営業訪問し、翌年社員に。コンテンツマーケティングという概念が誕生する前からコンテンツマーケティング業務に関わっている。現在はWeb解析専門。紙媒体の編集経験はほとんどないが、コピーライティング慣れしているので、文字数制限に対応するのは得意。