自分一人のクビだけでは済まないかもしれない…私のポリティカル・コレクトネス失敗談
当コンテンツ部署には「守ろう、ポリコレ!」という標語があります。
ただ、なんとなく標榜しているだけで、あまり詳しくメンバーに話したことはありません。
今回はこの場を借りて「私のポリティカル・コレクトネス失敗談」を披露して、ポリコレについてじっくり考える機会を設けたいと思います。
今から十数年前、私は未熟な編集者でした
今から14、5年ほど前、とある出版社のWEB編集部門に所属していたときのことです(※SSCとはまったく関係ない別の会社です)。
受託案件のとあるメディアに納品予定だった原稿の一文が、取引先の企業で波紋を呼んでしまいました。そのときのやりとりはざっとこんな感じです。
取引先「この“裸族”っていうのは蔑称ぽくないですか?」
私「え?いや、そんなつもりは…」
自社プロデューサー「大変申し訳ありません!今すぐリライト原稿をお送りします!(こいつ絶対許さん)(編集者向いてない)(辞めさせてやる)早く書き直して!」
私「も、申し訳ありません…」
ひとまずリライトして取引先とのやりとりは事なきを得ましたが、自社Pの怒りはなかなか収まらず、未熟だった私はその後Pに徹底的にマークされることになりました。
では、この「裸族」という表現の何がまずかったのかを、分析していきたいと思います。
執筆者の「自覚あり・なし」は無関係である
まず当時の私自身に差別意識は皆無で、蔑称を使っているという自覚はなく、「裸族=裸の人たち」というニュアンスで使ったと記憶しています。
一方の取引先は、「裸に近い格好で過ごすことが多い少数部族の生活形態を揶揄した人種差別的な冗談」として読者にとらえられかねないという懸念を示しました。
この場合、執筆者自身に差別意識や蔑称を使った自覚があるかどうかは全く関係なく、「そう思う人がごく少数でも存在していて、傷つく人がいるかもしれない」といった状況が問題となります。
原稿を納品した下請企業の担当者(私)一人のクビで済めばマシですが、取引先全体に責任や損害が及ぶ可能性もあります。
ささいな言葉一つの取り扱いミスでも、ネット炎上が止まなかった場合、記事削除→サイト取り潰し→株価暴落→リストラ…といった最悪の事態に発展する可能性もゼロではありません。
大昔のこととはいえ、自分自身の失敗なので、想像するだけで肝が冷えます。
外資系企業だったらクビが飛んでいた可能性も
最近、某有名IT企業の従業員が匿名のSNSでヘイトスピーチをしていたことが明らかになり、広報が謝罪文をリリースする羽目になりました。
いわゆる「バカッター」の一種ですが、該当の有名IT企業ではその従業員の処分内容までは明らかにしていません。
当部署同僚の推測ですが、おそらくこういったヘイトスピーチを周りに吹聴しても誰も気にしない土壌が社内でできあがっていて、該当社員を処分すると多くの人間を巻き込むことになるから処分について明言しなかったのでは、とのこと。あり得ると思います。
しかし、企業によってはポリコレに反する行いをした社員を、「企業成長を阻害する要因」とみなして排除することもあり得ます。
たとえばGoogleは、下記のような判断を過去に下しています。
Google、女性差別発言の社員を解雇「一線を越えた」 | ハフポスト
インターネット誕生以前の旧世代にとって「ポリコレ・ITリテラシー教育」は急務
一従業員のバカッターが公開された結果、炎上騒ぎで苦情が殺到したり、取引先が撤退したり、株価が暴落したり、となった場合、中小企業であれば倒産の危機に晒されます。さらに企業側が該当社員を告訴する「くら寿司」のようなケースも出てきています。
生まれたときからインターネットが存在する世代の人々にとっては「他者を傷つける言葉や画像をネット上で発表してはいけない」という認識は当たり前のことかもしれませんが、それ以前の世代にはITの常識があまり浸透していないのかもしれません。
最近では「中傷リツイート」も名誉毀損に当たるとして、橋下徹氏の訴えを大阪地裁が認め、某ジャーナリストに慰謝料が請求されたことも話題になりました。「引用しただけで自分の意見を述べたわけではない」という言い訳も通用しないということです。
一般的な企業にとって、従業員のポリティカル・コレクトネス教育やITリテラシー教育は急務だと思いますが、御社においてはいかがでしょうか?
とにかく、蔑称ととらえられかねない一文が入った例の原稿の納品先が、2017年のGoogleでなくて本当に良かったと思います(ケースは全然違いますが)。2019年の私ができる最善策は、過去の失敗を戒めとして、こうしてブログ記事に残しておくことです。
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