ブラックハットSEOとは?具体的手法とWeb制作会社が受託時に実施するブラックハットSEO調査方法

当社では、クライアントからWeb制作やコンテンツマーケティングを発注いただいたときに、サイト上で打ち立てた目標をどれぐらいの期間で達成できるかを図るため、過去にクライアントや関連業者が該当サイトにおいて「ブラックハットSEO」や「スパム行為」を働いていないか、事前調査をすることがあります。

なぜ受託時に「ブラックハットSEO調査」をするのか

「ブラックハットSEO」や「SEOスパム」は、Google検索などの表示順位を不正に上げる違反行為です。Googleにそれらの違反がバレたときには、Googleのデータベースからサイト情報がごっそり削除されたり、順位を大幅に下げられたり、といった重いペナルティが課せられます。

つまり、私たち受託制作者がクライアントのサイトに対し、いくら正当な「ホワイトハットSEO」を実施しても、そのサイトドメインがいわば「沼地」の状態だった場合は、更新したコンテンツたちは沼の底にどんどん飲みこまれていってしまうので、検索結果にはまったく反映されない、ということが起こり得るのです。

事前のブラックハットSEO調査で判明したドメインの汚染具合によっては、リニューアルよりも、ドメインの変更やサーバー移転をおすすめしています。

不正なブラックハットSEOの後始末でやるべき実施リスト&結果報告

上記ページでもご紹介した実施内容と若干かぶりますが、今回はより詳細に「ブラックハットSEO」の技術を紹介し、それらを事前に調べて突き止める方法についても解説します。

ドメインの歴史調査(新規ドメインか中古ドメインか)

ドメイン

サイトの開設に当たって新規で取得したドメイン(当社サイトだと「ss-complex.com」)なのか、中古の「オールドドメイン」で運用しているのか、を調査します。

この調査の重要度、実は「低」です。クライアントのサイトポリシーを探る上では重要な調査なのですが、最近運用を開始したサイトだと新規ドメインがほとんどなので、優先度は低めです。

とはいえ、運用開始から10年以上経っているサイトの中には、中古ドメインを採用しているものもいまだに存在するので、あなどれません。

中古ドメイン運用のSEOが廃れた理由

10数年ほど前までのことですが、新興サイトのスタートダッシュを加速する(下駄を履かせる)ため、歴史が古く被リンク効果がまだ残っている中古のドメインを活用する、というSEO手法が存在していました。
規模の大きいサイトが何らかの理由で更新を停止して手放したドメインを、全く関係のない赤の他人が買い取り、全く関係ない無名のサイトが同一ドメイン上で公開される、という不思議な光景も珍しくなかったのです。

そんな「オールドドメイン神話」も、度重なるGoogleのアルゴリズムアップデートによって完全に崩れ、中古ドメイン市場も崩壊し、現在に至っています。

ドメイン調査に使うのはインターネットアーカイブサイト

ドメインの歴史調査には、「インターネットアーカイブ ウェイバックマシン」(Internet Archive: Wayback Machine)を使用し、過去の履歴一覧を参照します。
中古ドメインだった場合は、かつてそのドメインでどのようなサイトが運用されていたのかが、ひと目でわかります。

2015年3月26日当時の当社サイトキャプチャ
2015年3月26日当時の当社サイトキャプチャ

クライアントサイトが出自と関係のない中古ドメインで運用していると判明した場合、今の時点で障害がなくても、今後のアルゴリズムアップデート時に検索順位が大幅に下落する可能性はゼロではないので、「傷が浅いうちのドメイン変更」をおすすめしています。

近頃ほとんど見かけなくなった「IP分散型サーバー」

中古ドメインとともに人気があったのが「SEOに有利なIP分散型サーバー」です。
同じサーバー内で多くのサイトドメインを運用している企業は多いと思いますが、自社のサイト同士が相互リンクをしても、同一サーバーの同一IP同士のリンクだと被リンクの効果が薄まってしまう、という現象がありました。それを避けるため、サーバー内のIPを分散させる手法が好まれたのです。

Googleが外部リンクをさほど重視しなくなった昨今では、IP分散サーバーをうたうサーバー業者もあまり見かけなくなりました。

不正なリンク購入・リンクファーム生成などをしていないか

相互リンク

クライアントへの聞き取り調査のほか、Google Search Consoleのリンクツールで不正な被リンクがないかをチェックします。

  • Search Consoleで被リンクを調査
  • SimilarWebで不正が疑われる被リンクサイトを調査
  • (「はてなブックマーク」の被リンクユーザーを調査)
  • Search Consoleでスパムリンクを無効化
  • Search Console内の不審な管理アカウントを削除(クライアントがスパム業者に権限を渡していた場合)
  • クライアントからスパム業者へコンタクトを依頼

不正なブラックハットSEOの後始末でやるべき実施リスト&結果報告より

この手法については、下記ページに詳細を載せています。

不正なブラックハットSEOの後始末でやるべき実施リスト&結果報告

クローキングをしていないか

クローキングとは、人間のユーザーと検索エンジンに対しそれぞれ異なるコンテンツまたは URL を表示することです。
(中略)
サイトがハッキングされた場合、ハッキングされたことがサイト所有者に発覚しにくくなるようにハッカーがクローキングを行うことは珍しくありません。

クローキング – Search Console ヘルプ

かつてJavaScriptや、画像、Flash といった(テキスト情報を重視する)検索エンジンの理解が及びにくい技術を使う場合には、「エンジンだけにHTMLテキストを表示する」といったクローキングを実施することもありました。しかしクローキングを使わない技術が確立されてきた昨今では、馴染みのない人も増えたことと思います。

JavaScriptはnoscriptタグを、画像はaltタグを使用してテキスト情報を補足するのが今のスタンダードです。動画コンテンツは時代を経て主軸はFlashからYouTubeに置き換わり、キャプションや字幕等を活用してクローラーにテキスト認識させることが容易になりました。

クローキング使用の有無は、クライアントのサイト制作・開発者に聞き取り調査をするほか、Google Analyticsで異常なトラフィックが発生していないか、Search Consoleのインデックスカバレッジ等でエラーが表示されていないか、等をチェックします。

参照記事:NoHacked ブログ パート 4:ハッキング被害の監視と調査方法(Google ウェブマスター向け公式ブログ)

マルコフ連鎖を使用したワードサラダ記事、コピーコンテンツの有無

サラダ

既存コンテンツの中にワードサラダ記事やミラーリング、コピーコンテンツがないかをチェックします。
これらは一昔前によく見られた典型的なスパム手法で(残念ながら今でもたまに見かけますが)検索順位の低下に影響を及ぼします。

「ワードサラダ」は目視で発見

無意味な文字の羅列で生成された不可解な記事がワードサラダです。有用な情報が掲載されていると検索エンジンのクローラー(bot)に判断させるのが目的で、人の目で見ればすぐにその不自然さに気づくはずです。

2009年8月25日
コンビニエンスストア2位のローソンとドラッグストア最大手のマツモトキヨシホールディングスは24日、同僚の背中を傘の先で数十回突いたり、ベルトでたたいたりした。

2010年5月18日
ここで死んでいるのを確認しながら、少しずつ聞いていく。話してもらえるまで待つしかない相手の心の傷は一生消えない。

圧縮新聞(凍結中)より

phaさんが以前リリースしていたTwitterアカウント「圧縮新聞」(現在凍結)では、同時刻帯に配信された複数のニュース情報を圧縮した、上記のような奇妙な文面をつぶやいていました。マルコフ連鎖という仕組みを使っているそうです(「圧縮新聞」を作った – phaの日記)。

「ワードサラダは圧縮新聞みたいなコンテンツ」と言えば想像がつきやすいのではないでしょうか。なお、Googleのガイドライン「コンテンツの自動生成 – Search Console ヘルプ」では、ペナルティを課す対象の一つに「マルコフ連鎖などの自動処理によって生成されたテキスト」を上げています。

ライター仕事をAIに丸投げするのは可能か?AIに仕事を奪われないライターとしてこの先生きのこるには

(↑の記事でも「ワードサラダ」や「テキストの自動生成」がどれだけまずいかを解説しています)

既存コンテンツの中にワードサラダ記事がないかをチェックするのは、コンテンツ数が膨大な場合は大変なので、まずはGoogleAnalyticsでアクセスの多い人気記事をピックアップし、リンク参照元や1ユーザーあたりのPV、滞在時間などをチェックします。アクセス数が多い割にPV1.0、滞在時間0秒しかないページは、ユーザーではなく検索エンジンのクローラー(bot)が閲覧しており、何らかのスパムである可能性が高いはずです。そこで実際のページを目視し、ワードサラダかどうかを判断します。

こういったページが見つかった場合は、まず記事生成の背景をクライアントに聞き取り、当社とクライアントの足並みを揃えるため、スパム行為があったことを報告し、該当ページの速やかな削除と、今後こういった無意味な記事を生成しないことをおすすめしています。

「ミラーリング&コピーコンテンツ」は聞き取り調査とコピペチェックツールを使用

猿のミラーリング

Webサイトを全部、もしくは一部を複製する「ミラーリング」と、自他のコンテンツを複製する「コピーコンテンツ」。複製という意味では同じ状態ですが、目的が若干異なります。

正当なミラーリングと不当なミラーリング

ミラーリングの場合、「サーバー負荷の分散」といった正しい目的で使用される場合もあります。たとえば最近だと昨年(2019年)の台風災害発生時に、県や市町村の公式サイトにアクセスが集中したため、多くのサイトがミラーリング機能を使っていました。

また、アフィリエイターなどがバナー広告掲載料を不当に得るため、自サイトを複製して2サイト分を広告出稿者に請求するケースも見られます。もちろんこれは不正なミラーリングです。

自身のコピーだとどちらかの記事の検索順位が下る・他者のコピーは訴えられる可能性がある

コピーコンテンツは、自サイトでリリースした文面をそのまま別のブログサービスなどに転載したり、他者がリリースしたコンテンツをコピーしたり、といった類のものです。

コンテンツホルダーが自分自身であればさほど問題はなさそうなのですが、同じ文章を違う場所に載せると、Googleはどちらか一方をコピーとみなすため、どちらかの検索順位が下がり、サイト自体の評価も下がってしまうので、あまりおすすめしません。

他者のコンテンツをコピーしている場合は、相手方の著作権を侵害しているので、Googleがどう判断するかはさておき、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づいて訴訟を起こされる危険があります。

ミラーリングやコピーコンテンツの調査は、まずクライアントのサイト制作・開発者に聞き取りし、ミラーリングや記事の自動生成などをしていないかを確認します。
また、サイトの歴史が長く、運営担当者の交代が多い、あるいは担当者が複数いる場合は、聞き取り調査が意味を成さないことも多いので、まずはアクセスランキング上位の人気記事をある程度抜粋し、「コピペチェック」を手動で実施します。

クライアントサイトにコピーコンテンツが見つかった場合、訴訟を起こされるリスクがあることをお伝えし、該当ページの速やかな削除と、今後コピーコンテンツを生成しない体制を整えるよう指示します。さらにスパム知識と同様に著作権についても認知を深めてもらえるようお願いしています。

コピペチェックツールの使用例については、下記ページで解説しています。

コピペチェックツールを比較してみた

ブラックハットSEO番外編・最近あまり見かけない手法とグレーハットなSEO

ブラックハットSEO

ここからは、ブラックハットSEOの中ではほぼ見かけなくなった「廃れている手法」と、グレーな手法をご紹介します。

隠しテキスト

白背景に白い文字、テキストサイズ0等の「隠しテキスト」は、人間の目や検索エンジンを欺く目的で使用されるものです。「デフォルトのフォントだとダサいから、見出しには画像を使いたい」といったときは隠しテキストで対応することも多々ありました。
しかし昨今のブラウザはデザイン性や視認性が非常に向上したので、こういった技術を使うケースはだいぶ減ってきたように思います。

キーワードの乱用

検索エンジンで上位表示を狙いたいキーワードを、ページ上で不自然に頻出させる手法です。

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キーワードの乱用 – Search Console ヘルプ

かつて、「ページ全体に掲載している文字数のおよそ○%を重要キーワードで埋めればSEO対策になる」といった手法が存在していましたが、今ではほとんど意味を成さなくなっています。

メタキーワードの乱用

メタディスクリプション(検索エンジン等に表示されるページの概要文)のほかに、かつては「メタキーワード」というものが存在していました。しかしそのサイトやページに関係ないキーワードを大量に羅列(キーワードスパム)するサイトが多すぎたのか、Googleはメタキーワードのサポートを終了してしまいました。

ところでYouTube動画の概要には、関連キーワードが入れられる「ハッシュタグ」なるものが存在しています。ハッシュタグには14個という上限が設けられており、それ以上だと無効になってしまいます。YouTubeというプラットフォーム上で有効・無効が決定されるので、かつての「メタキーワード羅列」という無法状態にはなりにくいようです。

YouTubeハッシュタグに関連する記事

やってみてわかった動画SEO・VSEO|YouTube検索順位上昇のポイント

グレーハット?な「逆SEO」

重要なキーワードで表示順位を上げることを「SEO」だとすれば、逆SEOはその逆で「順位を下げる」技術です。
たとえば、自社や自身への誹謗中傷や悪評を上位表示させないため、無意味な関連キーワードを上位表示させたり、無意味なページをたくさん生成したり、といった「検索順位の埋め立て」が逆SEOに当たります。

いわれのない誹謗中傷を受けた、あるいは個人情報を掲載されたときはGoogleに申請すれば、該当ページを検索結果から削除してくれます。風評被害や名誉毀損を防ぐために、削除申請や訴えをおこすのは正規の手法ですが、誹謗中傷ではない「批判の声」に耳を傾けず、その声を抹殺するために「逆SEO」を使うのは、限りなく黒に近いグレーハットな手法だと言えます。

まとめ

今回ご紹介したブラックハットSEO技術は、一時的に検索順位の上位表示に役立っているものもありましたが、結局Googleアルゴリズムのアップデートのたびに淘汰されていったものばかりです。

Webサイトの運用を開始するときに、身軽な状態でスタートするのと、足かせを多数付けてスタートするのとでは、前者の方が圧倒的に有利です。「資産だと思っていたら足かせだった…」ということもあり得ます。

「Webサイト運用に使えるショートカットの数は思ったほど多くない」というのがこの10年で得た当社の実感です。着実に、確実に、ともに歩んで行きましょう!

ブラックハットSEO調査一覧

  • ドメインの歴史調査(聞き取り・インターネットアーカイブ調査)
  • Search Consoleで被リンク調査・スパムリンク無効化
  • クローキング調査(聞き取り・Analytics監視、Search Consoleエラー確認)
  • ワードサラダ調査(聞き取り・Analytics監視、目視確認)
  • ミラーリング・コピーコンテンツ調査(聞き取り・コピペチェックツール使用)

SSCが実施する「ホワイトハットSEO」の施策一覧

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創業2011年から現在まで、およそ200社のWebサイト・コンテンツ制作・コンサルティングを手掛けてきたWeb専門代理店です。営業に関するお知らせやプレスリリースのほか、当社で蓄積したWebマーケティングに関する知的資産(ナレッジ)を公開します。執筆者はデザイン、開発、SEO、コンテンツマーケティング、営業など各部門の専門家です。